先回につづき、「コンセプト」についてです。
コンセプトは、
○ はっきり分からないが、何を目指しているか大まかに分かる
○ 一定の振れ幅を持ちながら
○ やらなくてもいいことも明確にする
先回は、このような私なりの解釈を書きました。
今回はこれがとてもわかりやすいと感じた例をご紹介します。
公式だけど公式ではない…?
今回取り上げます話題は、誰もがご存じ「ディズニー」に関してです。
いきなり大風呂敷を広げました…。
「ウォルトディズニージャパン社」のHPには、取り扱っている商品が並んでいるのですが、その中にひっそりと「ゲーム」の項目があります。
https://www.disney.co.jp/games
*許諾の関係で画像の掲出は控えます。
こちらのページを見ると、公式として扱っているゲームには、意外にも様々なテイストのものがあることがわかります。
とくに「ツイステッドワンダーランド」というゲーム。
日本向けのイラストのタッチで、初めて見ると「あれ?ディズニーっぽくないな」と感じられるかと思います。発表当初は、生粋のディズニーファンからは、“受け入れ難い”といった声も多かったようです。
しかし、予算を掛けている様子や盛り上がりは確実にありました。
現在でも、新宿ALTA前や、JR東京駅の京葉線地下通路(「舞浜駅」に向かう人が通る場所)に、定期的に大々的な広告が掲出されています。
↓このようにでかでかと。調べたところこの場所の掲出費は820万円程(1週間)だそうです(゚◇゚)
ですが、発表から4年近くだった現在でも、「ディズニーランド」自体には公式に扱われている様子はありません。ブランディング的にはそうなんだろうと思いながらも…この微妙な現象はなんだろう、と個人的にモヤモヤしていました。
何を隠そう、私がこのゲームのファンなのでした…。
コンセプトと照らすと合点がいく
そして、ある日別のきっかけで「コンセプト」のことを考えていたときに気がつきました。
「ディズニー」と一口に言っても、
・ウォルトディズニージャパン
・オリエンタルランド(ディズニーランドの運営企業)
と、2つの会社があることに!
そしてそれぞれ企業コンセプトを見ると…
ウォルトディズニージャパン
世界中の人々を楽しませ、知的好奇心を満たし、ひらめきと感動をお届けすること。
オリエンタルランド
ファミリー・エンタテインメント
もうお気づきでしょうか。
「オリエンタルランド」は「ファミリー・エンタテインメント=家族を楽しませる」ことがミッションなのでした。
それならば、一部の女性向けのゲームの「ツイステッドワンダーランド」は、業態の枠組みには入らないのではないでしょうか。ディズニーランドで公式に扱われないのは、合点がいきます。
そして同時に大元の「ウォルトディズニー」社は懐が大きい…。
綿密な市場調査を元にしたドライな戦略もあることは承知の上で、それでも、見事にコンセプトが「ツイステッドワンダーランド」のようなゲームの存在も包んでいるのだと感じます。
「ディズニー作品のイメージにそぐわない」として切り捨てることは簡単ですが、コンセプトに立ち返れば、これは「あり」と判断し、そして、 日本市場で売れる確率の高い方向に舵を切る、その踏ん切りの良さ。痺れます…。そしてなにより、“夢”と言ってもいいような何か広がりを感じ、感動しました。ウォルトディズニーさんなら、「あまり馴染みのない絵柄だけど、おもしろそうだね!やってみよう!」と言いそうにまで思えます。 「ディズニーっぽくないけど、これもディズニー!?」という取り組み、これが良い意味での裏切りだと感じます。
コンセプトによって「オリエンタルランド」が「やらなくてもいいことを明確にしている」点も、見逃せません。企業なので当たり前ですが、志向や好みだけで単純に切り捨てているわけではないことが理解できます。
コンセプトは発想の元
こう見てくると、
コンセプト>見え方・デザイン(イメージ)
なのだと、つくづく感じます。
見た目はどうしても直感的で先に伝わるので、それが表面的にブレたように見えるかもしれませんが、コンセプトがある場合は企業としてはブレていません。むしろ、コンセプトという足場がしっかりしている方が、表面的なイメージに捉われず、思いもよらない方向へ飛躍できるのだと思います。
節操がない方が節操がある
この点に関して、もう一つわかりやすい例がありました。
私はあまり詳しくないのですが、現代アートの作家・村上隆さんのことを少し取り上げさせてください。
「日本のサブカルチャーにあるような大衆的な表現と、伊藤若冲のような高尚とされる芸術表現には、境目がない(≒スーパーフラットだ)」という概念(コンセプト)を提唱されていることで有名です。
この方の作品を見ると、これぞまさに現代アートという感じで、一見“節操がない”ように見えます。
受け手によっては不快感をもよおす作品もあるほどですが、概念を理解して見ると、「ゆるぎないコンセプト」があるからこそできる表現なのだと感じます。これが、ものすごい金額でオークションにかけられたりするというのですから驚きです。
節操がなく見えている物事の方が、実は節操(軸)があることも、ある。
ただ、これは「アート」の話で、ターゲットに刺さることを目指した分野ではないので、確実にターゲットがあるビジネスやデザインの領域とは話が違ってきます。
コンセプトは、思いもよらない表現ができたり、人の心を動かす源にもなり得るのだなという一例として、余談でした!
まとめ
規模の大きい話ばかりしてしまいました。最後にもう一度まとめです。
コンセプトは…
○ はっきりとは言い切らない、何を目指しているかの方向性(→同じ意識を共有できる)
○ 一定の振れ幅がある(→イメージに捉われないようになる)
○ やらなくてもいいことを明確にする(→客観的に判断ができる)
○ その結果、想像もしていなかったことに繋がることもある(→良い意味の裏切り≒感動に繋がる)
という点で、私自身もとても大切なものだと考えています。
偉そうに恐縮ですが、私なりの考えをまとめてみました。
自分達の宣伝物を作る場合でも、ぜひこの「コンセプト」を一緒にしっかり据えていきましょう!
きっと、同じ方向を目指すチームとして、避けるべき脇道は避け、でも思いもよらない冒険ができると思います!
ここまで書いて「テーマ」について触れていませんでした(^^;
「テーマ」と「コンセプト」の関係については、さらに長くなるのでまた別途記載します!
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